ゲーミフィケーションを利用した看護実習の疑似体験システムの開発

 本研究では、ゲーミフィケーションの考えを用いて、看護実習を疑似体験できるシステムについて研究をしています。2017年度の看護師は約160万人であり、2025年までには約206万人の看護師が必要とされています。しかし、厚生労働省の資料によれば、2025年の看護師は約193万人と見込まれており、13万人が不足しています。2016年度の新人看護師の離職率は7.6%であります。原因の1つが「理想と現実とのギャップ」が挙げられます。このギャップを埋めるために様々な対策が行われています。例えば、就職前に必要な知識・技術などを主体的に学習するための情報提供、先輩看護職員との交流の場を設けるなどがあります。我々はこのギャップを看護実習の疑似体験できるシステムで埋めようとしています。
 ゲーミフィケーションとはゲームではない物事にゲーム的要素を応用することです。身近なもので例えますと「ポイントカード」が挙げられます。ここに10ポイント貯まったら豪華景品をプレゼントされるポイントカードがあると想定します。景品欲しさに少しずつポイントを貯めていき、最後まで貯めれば景品が貰えます。このポイントを貯め、景品を貰う行為が「ゲーミフィケーション」です。
 本研究では千歳市内を運行する路線バスで運用しているバスロケーションシステム「ち〜なび」を利用しています。「ち〜なび」は本プロジェクトが開発したシステムです。各バスに搭載したスマートフォンのGPS機能と無線通信機能を利用して、バスの現在位置を把握しています。「ち〜なび」のシステム概要図は図1になります。

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 本研究では、自律エージェントシステムを基にシステムを設計します。自律エージェントとは周囲の状況を認識して,自身の方針に従い意思決定を行い,環境に働きかけを行うフレームワークです。ユーザと患者との会話によって患者の感情が変化するパラメータや看護師による最終判断の点数化を自律エージェントで制御します。患者の発話に対してユーザ(看護師)が返答することで,環境との相互作用を図り,状態を遷移する形を基本としています。ユーザが患者に対して会話や処置を行うことで患者Agent内の会話や感情が変化し、患者Agentは発話のデータや感情のパラメータから構成されるシステムを設計しています。ゲーミフィケーションの要素として患者の感情を導入することで、患者の状況を可視化することです。患者の意図を読み取り適切な処置を行えば、患者の表情は良い方向に傾き、適切ではない処置を行えば、感情は悪い方向に傾くなどを考えています。


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